2019/01/29


年末にはなかった仮囲いで、再開発地域が完全に覆われている。




山手線横の道路は、交通ルール上「廃道」になったが、歩行者のための通路として残され、まだその役目を果たしている。今の日の高さだと、午前中は斜めの日が差し込む美しい場所だ。



釣り具の上州屋が入っていたビル。
廃墟に差す光は、なぜこんなに蠱惑的なのだろう。



ビルに囲まれた民家。
解体中、ガラスが飛散するのを防止するために張られたガムテープが気になった。
戦争中のような空気感が、見ていてなぜか不安になる。



YAMAHAのエレクトーンシティ前の坂を下る作業員たち。
音楽の殿堂は今、現場作業員の詰め所になっている。



とんかつさくら亭の前は現場通行口になり、一般人は歩けなくなっている。
年末までは歩ける状態だったのだが(下の写真)。



桜丘の再開発の意図は、デベロッパーではなく地権者にある、と噂で聞いた。

桜丘は、24時間人々で賑わう渋谷駅の西口(ハチ公口)方面とは、戦後、オリンピックを契機に作られた国道246号で分断されてきた。地権者たちは、それが口惜しかったそうだ。

各ビルの老朽化が気になってきた今の頃合いで、渋谷駅全体の再開発工事に相乗りする形で街を全く新たに作り替え、駅との接続口を大いに増やして人を呼び込みたいのだという。

西口の利用者である私からしても、ここは渋谷の“裏口”のようなイメージだった。事実、この再開発が具体的に進み始めるまではほとんど訪れたことのない場所だった。廃墟となった今からここのノスタルジーを語るのは、彼ら地権者からすれば全く無意味だろうとは思う。廃墟になる前に来いよ、というのがおそらく彼らの言い分だろう。

ちなみに再開発の計画を見ると、街はかつての姿を全く消し、高層ビル数棟と、その下にスカートのように広がる複層のペデストリアンデッキでこのエリアを覆い尽くすようだ。街は、ここがかつての“裏”渋谷だった記憶を完全になくそうとしている。

言い方は悪いが、桜丘は“裏”だったが故に、西口のようなチェーン系の店で埋め尽くされることがなかったのは事実だろう。それこそが街の特徴であったはずだ。




その特徴をかなぐり捨てる今、桜丘は新たな顔を創造しなければならない。ゼロから1を作り出すのは、何だって大変だ。西口や東口がやろうとしている(その道が正しいとは言いたくないが)1を10にするのとは訳が違う。



ストリームやスクランブルスクエアのような、思想なきビル建設がただ行われるだけなのか。
あるいは、少し違う回答が出せるのか。
桜丘は今、岐路に立っている。

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Sony α7R III
Sony Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS

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